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ep.00
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大学3年の夏。
それは当然やってきた。
「っいやいや、無理だよ!」
「頼む!そこを何とか!」
「何回言われたって無理なの!」
もうかれこれこんなやり取りを30分以上は続けていると思う。
それでも目の前の男は、…諦めてくれない。
「部屋余ってんだろ?家賃は全部こっちが払うからさ」
「そういう問題じゃ…」
「なんなら飯も作る」
「いや、だから…」
…だからほんとに、そういう問題じゃないんだってば。
本日最後となる講義が終わりバイトも休みだ、なんて浮かれ気分だった私にこの男 成海大星はとんでもない事を口走った。
"部屋を貸して欲しい"
その言葉を聞いた瞬間の私の顔と言ったら、そりゃあもう物凄くアホ面だったと思う。
思わず は…?と溢れてしまった言葉に大星は「樹も」と訳のわからない事を言う。
どういう事なのか詳しく聞けばどうやら大星と樹くんが住んでいるアパートが、…取り壊しになるらしい。
その事は随分前に文書としてポストに入っていたらしいんだけど、まぁ2人とも確認してなかったみたいで…。
取り壊しが2日後に迫った今日、行く当てなく私にお願いしてるのだとか。
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