8人が本棚に入れています
本棚に追加
気を遣ってわさわざ電話するように言った樹くんを、彼っぽいな、と思ったのは、きっと昨日の夜の会話を思い出したからだと思う。
布団の事も、ここは和泉の家だろ?って言ってくれた事も。
きっと彼はもともとそういう気遣いが当たり前のように出来る人なんだろう。
「あー、まじ腹減った」
そういえば大星も出会った頃は、遠慮というものを知っていた気がする。
これが"慣れ"というものなのか…。
「…食パンしかないよ?」
「げ、初日のおもてなしが食パン?」
「しょうがないでしょ、本当は今日来る予定だったんだから…」
そういう私も、大星には遠慮する事もなくなった。
言い方を変えれば、この自然な関係が、少しだけ心地よかったりする。
「んじゃー買いに行くか」
「私、アイスがいい」
「俺、アイスコーヒー」
「は?何で俺一人で行く事になってんだよ」
心地よくて、当たり前で、それが私の日常、だった。
唯一異性の中で仲がいいと言える大星と、顔見知りの樹くん。
この距離感が、きっとみんなが、幸せになれるはずだった。
最初のコメントを投稿しよう!