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私と仲の良い杏果がそう言っていたような気がする。
「さぁ。詳しくは知らねーけど彼女には頼れないとか?」
「頼れないって?」
「いや知らねーけど。んでもあいつ美優の事知ってたけどな」
「っえ?どうして?!」
「さぁ」
…これはびっくりした。まさか樹くんが私の事知っているなんて思いもしなかった。
チラリと見かけた事はあっても目を見て話したことすらないのに。逆にどうして知っているだろうと不思議なくらいだ。
「な?いいだろ?次のアパートが決まるまでだからさ」
考え込んでいる私とは反対に、そんな事よりもと言いたげな大星は「2週間!2週間でいいから!」と両手を合わせて目を瞑りながらお願いしてくる。
人はまばらにしろ、まだここは大学の校内だ。
すれ違う学生達が私たちの事をちらちらと見てくるのが非常に気まずい。
「…んー、」と小さな声で疼く私に「頼む!」とダメ押しの一言を言う大星に、もう首を縦に振るしかなかった。
「…2週間だけだからね?約束だよ?」
「うぉおお、まじ?!」
「っちょっと、うるさい!」
「まじか!あ、樹に連絡しねーと!」
そう言うや否や、スマホを取り出し電話をかけている大星に本日二度目となるため息が溢れる。
だけど「ありがとな」と子供のような笑顔を向けられれば、まぁいいか、と少し諦めついた気持ちになった。
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