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次の日1限から講義があった私は、大学からの友人の杏果に昨日の経緯を話した。
「というわけで、慣れない大掃除で筋肉痛になりました…」
「ねえ、大丈夫なの?」
「…大丈夫じゃない、めちゃくちゃ痛いもん」
「いや筋肉痛の方じゃなくてさ!共同生活!」
お昼にランチに出た私たちは、リーズナブルなパスタ屋にきている。
ミートソースパスタをフォークでくるくると巻きながら流し目でこちらを見てくる杏果は、今日も今日とて、美しい。
「だって樹くん彼女いるじゃん。それなのにいいって言ってんの?」
「んー、みたいだね…」
「私が彼女だったら絶対いやだね!ていうか彼女の家に行けばいいじゃん」
「さぁ、なんか私もよく分かんないんだよね」
ナチュラルなメイクをしているというのに、彼女の目力といったら3年くらい一緒にいる私でもビクっとなってしまう。
「美優はいいの?」
「なにが?」
「なにが?って、樹くんに惚れちゃうんじゃない?」
「…っへ?」
「だってさあの顔だよ?毎日一緒にいたら好きになっちゃうでしょ」
そう言いながらパスタを頬張る杏果に「…あの顔って?」と疑問をぶつけると、分かりやすく眉間に皺を寄せた。
「はあ?もしかして美優ってビーセンなの?」
「いやいやそう言う事じゃなくて!」
「あんなにイケメンなのに?」
信じられないとでも言いたそうな顔つきでこちらを見つめる彼女に、今度は私が顔を歪ませる番だ。
「そんなにマジマジと見た事ないの」
本当に、かっこいい、かっこよくないと判断出来るほど、彼の顔をよく見たことがない。
「あんなにイケメンなのに?」
「だって、関わりないんだもん」
「関わりなくたって顔くらい見るでしょ」
「え〜、そういうもんなの?」
ただでさえ、だだっ広い校内だ。
その中に何百人もの生徒がいて毎日知らない顔を見るというのに、関わりのない生徒の事なんていちいち気にしたりなんかしない。
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