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「ていうか3年も経つのに知らないって言うのがびっくりなんだけど」
「…いや、知ってるよ?顔をよく知らないってだけで…」
「そんなんだからいつまで経っても彼氏ができないんでしょ」
ビシッと、図星を突かれて思わず口を閉ざした。
いつまで経っても、というのは少し語弊がある気がするけど。
こう見えても3年前までは彼氏だっていたし、初めての彼氏で初めての経験だってしたし。
まぁだけど大学進学を機に別れてしまって、それからは彼氏はできていない。
というより、好きな人ができない。
「まぁでも樹くんに言い寄られたら、私も考えちゃうな〜」
「っはぁ?なにいってんの?」
「うそうそ、冗談だって」
…冗談、なのか。
こんな冗談を言う杏果には、もう付き合って6年になる彼氏がいる。
何度が顔を見たことがあるけれど、とても爽やかで優しそうな彼氏だ。
現に、ものすごく大事にしてくれるそうで。私はそんな杏果が、少しだけ羨ましい。
「もう!私の理想のカップルなんだから変なこと言わないでよ」
「理想って、大袈裟な」
「ほんとだよ?杏果たちみたいに信頼し合える関係が私の理想!」
たまに愚痴は聞く事はあっても、なんだかんだ杏果も彼じゃないとダメなところがある。
それは彼の方も同じなのか、喧嘩をしてもすぐに仲直りしている事が多い。
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