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それから大星から連絡が来たのは、バイトが終わってアパートに着いた頃だった。
週末の金曜日。
昔ながらの居酒屋でバイトをしている私は、サラリーマンで賑わう店内で休む暇もなく働いたせいで、アパートに着く頃には体力の限界だった。
そのうえ、着信を知らせるバイブが鳴り画面には"大星"との表示。
誰もいない玄関で、はぁ、と大きめなため息が響き渡る。
『ぅお、やっと出た』
通話ボタンを押して、もしもし、と声を発する前に大星の驚いたような声が聞こえた。
『何回も掛けてんのに電話出ろよ』
『…そうなの?ごめん、今バイト終わったから』
『え、じゃあなに、まだバイト先?』
『ううん、さっきアパートに着いたよ』
よいしょ、と声を漏らしながら靴を脱いでリビングへ向かう。
3年も住んでいると言うのに、やはり広すぎたなぁと。騒がしい場所から帰宅すると毎回思う。
そして毎回、バイト帰りの自分は焼き鳥のような焼肉のような何とも言えないような臭いを放っていて、直ぐにでもお風呂に入らないと気が済まない。
『ちょっとお風呂入りたいからまたあとで電話してもいい?』
そんな私の気持ちを知りもしない大星は、なぜか先程から黙ったまま。
『おーい、聞いてるの?』
なにか足音のような音がするから、外にでもいるんだろうか?
とにかくお風呂に入りたくて仕方ない私は、一度電話を切ろうと耳からスマホを離した。その時だった。
————ピンポーン
滅多にならない機械音が鳴って、なんだか嫌な予感がする。
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