最終章:キングの誕生 正義-Ⅲ

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 巨大な漆黒は、そのまま二人の意識を飲み込んでしまったかのように思えた。ズズッ……ズズッ……と歩みを進める度に、ビルが(きし)んで崩壊の予兆を(かな)でる。  ――一時撤退か。せめて人間のカインだけでも、避難をさせないと。  ジョージとプルトが焦りを見せた時、時空の切れ間が(あらわ)れた。眩い光の中にいたのはセツコだ。 「遅くなった! 人間のDNAだよ!」  ヨシュアがルルワの(まつ)(えい)に丸投げしていた、DNA溶液。どの程度あれば、死神を弱体化出来るかなど知らない医師達は、1トンもの溶液を作り出していた。  巨大な漆黒が、アンナが避難しているダイナー裏手を見た。彼女を目指し、再びズズッ……と歩みを始める。地獄の底から手招きするような、声が響いた。 「アンナ……アンナァアアアア」  ついにビルが崩壊を始めた。窓ガラスが()()()(じん)に砕け散り、街の人々も異変に気づいて悲鳴を上げている。  民衆は、州兵によって既に安全な場所に避難していた。フランツの手配がどうにか間に合ったのだ。  最後の一人を避難させた戦闘車両が、足早に走り去って行く。  歩みを止めない、巨大な漆黒に回り込んだカインが、チェーンを素早く巻き込んだ。残ったチェーンを腰に巻き、重心を低く取る。  人間に耐えられる重量ではない。(とつ)()に背後についたジョージが、カインのサポートに入った。 「プルト早く! DNAを入れてくれ!」 「だって……こんな化け物相手に、どうやって入れるんだよ!」  あたふたするプルトに、レイラから通信が入った。 (落ち着いて。ジョージの武器を使うの。セツコと一緒ならやれるわ!)  振り返ると、溶液に放水ホースを取り付けたセツコが(うなず)いている。
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