最終章:キングの誕生 正義-Ⅲ

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 震えていたプルトは、ジョージの武器を手に取ると、覚悟を決めて構えた。口の端から炎をたぎらせ、瞳を燃やす。 「ボクは、人間が好きなんだ! 偶像! お前なんかに奪われてたまるか!」  (せつ)()、意識ごと飲み込まれてしまったかと思われた、キングとヨシュアの声が全員に聞こえた。 「「()()()……()()()!」」  ()(ごう)と共に、突っ込んでいったプルトが、全身で刃を突き立てる。子供の頭ほど崩れ落ちた隙間に、セツコが思い切りホースを突っ込んだ。 「これが人間界の総意だよ、くらえ!」  1トンの溶液。人間のDNAが、巨大な漆黒――偶像に放出される。  みるみるうちに石化の始まった物体は、叫びとも呼べない不快な音を立てて、歩みを止めた。  完全に崩壊を始めたビルは、研究所を破壊し、石化した漆黒ごと巻き込んでいった。  忌まわしき始まりの場所が、音を立て崩れ落ちてゆく。  研究所の象徴だった、建屋を貫く大木や奇妙な花々も、()(れき)の中へと飲み込まれていった。  カインを抱きかかえたジョージとプルトで、街への被害を最小限に食い留めるべく手をかざす。ビルの崩壊を目の当たりにしたアンナ達には、その光景がまるで奇跡のように映った。  割れ落ちたガラスや鉄骨が、ゆっくりと重量などないかのように、降り注ぐ。そうして、見る間に形を砂へと変えていった。  全てが終わった時、ちょっとした砂丘と化したビル跡地に、キングとヨシュアを飲みこんだままの巨大な石だけが残った。 3bda09fa-f946-41d2-af3d-fb87bf251880  アンナ  死神のジョージ  レイラ  カイン  プルト  セツコ
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