31人が本棚に入れています
本棚に追加
「流石は元人間だ。鋭い所を突いてくる。我々死神界も、理から雁字搦めにされていたのかもしれないな。例外は認めない。だが、死神界の総意は違う。私は調停者として、仕事を果たしに来た」
アーキテクトが明けの明星を指差す。そこには、無数の死神が空を舞っていた。
「皆が少しずつ、偶像の犯した罪を背負いたいと言っている。偶像はこれから108に分割され、彼らに取り込まれる。20年の寿命は我々が引き受けよう」
調停者の宣言を皮切りに、人間界では鴉としか認識出来ない死神の群れが、一斉に巨大な石を啄み始めた。
キングが、赤子のヨシュアを抱きかかえて姿を顕した時、ようやく長い夜が終わった。
太陽が通りの果てから昇って来る。
朝が、来たのだ。
駆け寄ったアンナに抱きしめられたキングは、涙を零してその肩に頭を預けた。腕の中にいるヨシュアは、まるっきり生まれたての赤ん坊だった。小さな手が握っては開くを繰り返している。
「兄さんが、ここからやり直したいって」
ブルネットの赤子は、その生命いっぱいに、愛を求めて泣いていた。スカートを切り裂いたアンナが、小さい身体を包んでそっと抱き寄せる。
アンナの頬を、ただひたすらに涙が伝っていった。
「名前は、ヨシュアが良いって言ってた。アンナが呼んでくれていた、大事な名前だからって。それから……お腹の子を大切にしろって」
「兄さん――ヨシュアは罪の意識でこんな事を望んだの?」
朝日に照らされた、キングのサファイアブルーの瞳が一際、美しく輝いた。
「ハッキリとは言わなかった。記憶も奪ってないんだ。だけど……」
「だけど?」
最初のコメントを投稿しよう!