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最終話:世界はここに
20年後。
ポーランドの屋敷では、世界に羽ばたいていった子供達の写真を前に、微笑むマシューの姿があった。
彼は現在、35歳。ポーランドの屋敷を起点に、世界展開をする『希望の家』の理事長を勤めている。この学校のコンセプトは『望んだ全ての子供に教育を』だ。
希望の家設立に尽力したのは、キンドリー家とフランツ・デューラー、そしてモリシタ家であった。
理事長でありながら、未だ現場で教鞭を執るマシューが、校長室を後にする。
「はーい皆、座って! 授業を始めるぞー」
キャッキャとはしゃいでいる子供達は、光の粒そのものだ。
「マシュー先生、おはよー!」
「職員から、夜更かししてたって聞いたぞ。ゲームに夢中になるのも……」
「先生も一緒にやろうよ! ゲームって、頭の体操になるんだぜ」
「全く。じゃあ、晩ご飯が終わった後で集合だ。一時間だけだからな?」
「「やったー!」」
光に囲まれたマシューが、優しい笑みを浮かべていた。
高台からの眺めが良い、老人ホーム。そこにフランツ・デューラーがいた。施設であるものの、小さな戸建てが連なっている。
米帝は、危機が去ってからの方が大変だった。
大統領の不在。何も知らない世界は、副大統領含む彼らを行方不明として扱った。かつてのヨシュアによって、大統領を演じていたイタリアの極右組織は、状況が変わったと同時に撤退。
超大国としての立場が揺らぐ中、ここでもフランツ・デューラーは持てる全てを出し切って、国の再建に尽力した。
そんな彼は今、車椅子生活である。
窓際に生けられた百合の花。その色に顔を綻ばせていたフランツは、ドアを叩く音で振り返った。
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