最終話:世界はここに

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「セツコから貰ったバイクね。そう言えば私もこの間、TVで見たわ。元トロイの子達、世界レースで一番になっていたでしょう?」  レイラは腕を組むと、心底嬉しそうな声を出した。 「頑張ってるわよね、あの子達。私らバイク屋が(はい)(しゆつ)した、誇りだわ」  結論から言うと、特別顧客制度は復活した。アンナとレイラは、その称号者である。    あれから、人間界と死神界で何度も話し合いが持たれた。ヨシュアの暴走は、称号者を一名とした事に欠陥があった。取引に人間を使う事もだ。抜本的な改革がなされ、十年前に復活を果たした。  レイラ夫妻は、住居をウクライナに構えている。とはいえ立場は、ソビエトが立てた特別顧客だ。クレムリンは、彼女を政権の(ちゆう)(すう)に置きたがった。  今更、権力に興味のないレイラは、バイク屋をやりたいと言う夫についていってしまった。そんな()(まま)が通るのも、彼女が持つ抑止力のお陰である。  プルトの存在で、核が急速に抑止力を失ったこの世界では、ブラックダイアモンドがその代わりを勤めていた。  世界に開示されてしまった情報は、戻らない。  アンナとレイラは、西と東の代表になった。が、それ以上に二人は親友であった。    会話が弾む中、カインが現れた。セツコから譲って貰ったバイクを引いている。20年もの間、チューニングにチューニングを重ねて、未だに現役のカインの宝物だ。 「あれ、来る場所を間違えた。悪いな、アンナ。ここからバイクを持って出てもいいか? ホープは大学か?」 「ええ、もちろんよ。業者用のエレベーターを使って」 「ちょっと、カイン。立て続けに質問しすぎ。久しぶりにホープと会うのが嬉しいのは分かるけどさ……」  カインはピカピカのバイクを撫でると、少しだけ不満げな顔をした。
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