最終話:世界はここに

5/10
前へ
/542ページ
次へ
「アイツ、俺達に似過ぎだろ。親に連絡の一つもよこさないで、何やってんだ。折角、メールしたのに」 「ホープはもう20歳よ? 父親より大事なものがあるんでしょ」  その時、切れ間が一際輝いて、三人目の称号者が姿を現した。クロエだ。  彼女は26歳になっていた。今や、一児の母である。タッパーに詰めた惣菜を手に持ったクロエは、ハンカチで額を拭いていた。  二人目がお腹にいるクロエを気遣って、全員が駆け寄る。 「そうよ、カイン。私達は、もう子供じゃないんだから」  いつから話を聞いていたのか。タッパーを開けだしたカインに、クロエが呆れ顔で笑っていた。  クロエはあれから、ジョージと共に住居を長崎に移した。セツコが経営していた件の孤児院は、ジョージが跡を継いだ。   「そう言えばジョージは?」  姉レイラの言葉に、クロエはお腹をさすりながら笑顔を浮かべた。 「会合が終わったら、皆で食事をするでしょ。新鮮な魚を食べさせるんだって、釣りに出てる」 「ジョージは、相変わらずね」  思わず笑ってしまったアンナに、クロエがクスクスと肩を揺すって笑った。 「もう、アンナってば。キングも一緒にいるわよ」 「いやだ、あの人……昨日からいないと思ったら。サプライズってはしゃいでた理由、それだったのね」 「アンナ、クロエ。ぼちぼち時間よ」  アンナ  レイラ  クロエ  三人の称号者が揃った会場で、PCのモニターが一斉に灯った。半年に一度の特別顧客会合が始まるのだ。  今日の議題は、ルルワの(まつ)(えい)についてである。国際テロ組織と認定されたこの団体は、ノーマンとレベッカがトップを務めており、未だに各所で問題を起こしている。 「さあ、始めましょう」  アンナの声に、レイラとクロエが両脇に立った。 fdea14cc-17d5-4f87-b1dd-e74042d0779c
/542ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加