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「アイツ、俺達に似過ぎだろ。親に連絡の一つもよこさないで、何やってんだ。折角、メールしたのに」
「ホープはもう20歳よ? 父親より大事なものがあるんでしょ」
その時、切れ間が一際輝いて、三人目の称号者が姿を現した。クロエだ。
彼女は26歳になっていた。今や、一児の母である。タッパーに詰めた惣菜を手に持ったクロエは、ハンカチで額を拭いていた。
二人目がお腹にいるクロエを気遣って、全員が駆け寄る。
「そうよ、カイン。私達は、もう子供じゃないんだから」
いつから話を聞いていたのか。タッパーを開けだしたカインに、クロエが呆れ顔で笑っていた。
クロエはあれから、ジョージと共に住居を長崎に移した。セツコが経営していた件の孤児院は、ジョージが跡を継いだ。
「そう言えばジョージは?」
姉レイラの言葉に、クロエはお腹をさすりながら笑顔を浮かべた。
「会合が終わったら、皆で食事をするでしょ。新鮮な魚を食べさせるんだって、釣りに出てる」
「ジョージは、相変わらずね」
思わず笑ってしまったアンナに、クロエがクスクスと肩を揺すって笑った。
「もう、アンナってば。キングも一緒にいるわよ」
「いやだ、あの人……昨日からいないと思ったら。サプライズってはしゃいでた理由、それだったのね」
「アンナ、クロエ。ぼちぼち時間よ」
アンナ
レイラ
クロエ
三人の称号者が揃った会場で、PCのモニターが一斉に灯った。半年に一度の特別顧客会合が始まるのだ。
今日の議題は、ルルワの末裔についてである。国際テロ組織と認定されたこの団体は、ノーマンとレベッカがトップを務めており、未だに各所で問題を起こしている。
「さあ、始めましょう」
アンナの声に、レイラとクロエが両脇に立った。
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