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プロローグ
緑の小高い丘の上――。
青く静かな内海を見下ろす城の中、白薔薇の咲き乱れる庭園からお茶会を楽しむ令嬢たちの軽やかな笑い声が聞こえてくる。
ガラスのように磨かれた石英の床に立つのは、白銀の鎧をまとう近衛騎士。
白磁の廊下を行き来する文官たちが、時折すれ違う豪奢な身なりの貴族にうやうやしく頭を下げる。
そんな、どこもかしこも真っ白で煌びやかな王城の片すみにひっそり佇む、石造りの無骨な建物。
王宮勤めの騎士達が集う修練場で、夕闇の迫る中グレアム・ヴァーミリオンは独りもくもくと剣を振るっていた。
――七百九十八、七百九十九……。
日課である素振り千回まで、あと二百。そろそろあがるぞ、という同僚騎士の声が聞こえたような気もするが、グレアムはそれに応えることなく剣を振るい続ける。彼の耳に届くのは、鈍色の切っ先が空気を切り裂く音だけだ。
――九百三十二、九百三十三……。
残すところあとわずか。しかしその研ぎ澄まされた集中力は、聞き覚えのある男の声で遮られてしまった。
「グレアム、グレアム、グレアムぅ――――!」
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