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「すまぬ。遅くなった」
「何だ、この警報は。火事か?」
さくらが作業着姿で現れた。
「ああ、姫! 大変です!」
「ノゾムが応答しません!」
「火災報知器もノゾムが!」
作業員がくちぐちに報告する。
「ノゾムが……泣いている……?」
さくらが天を仰いで何かを受け止め
ようとしていた。
「ノゾムは壊れたのではない!」
電動車椅子に乗った老人が
エレベーターホールから現れた。
「殿!」
「一同、殿に敬礼!」
「なおれ!」
「ジイジ。ノゾムが、ノゾムが……」
さくらが老人に泣きついた。
「ノゾムは沈思黙考モードに
入っていただけじゃ。自分の
出した答えを検算しているのだ。
兆単位でな。結果が確かとなれば、
間もなく復旧するだろう。
自分の中に芽生えた答えを
友と分かちあうために」
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