ある友だち

2/14
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
 風邪をひいたという幼馴染の美和のところへ見舞いに行く途中で、その女の子とは出会った。洋館の二階の窓から物憂げな表情で前の通りを見下ろしていた彼女は僕を見つけると、少し驚いた顔をして、それから僕を呼び寄せるように手を振った。  まさか、と思って周囲を見回してみたがそこには僕しかいない。人違いではないらしい。あの女の子はまさに僕に対してその手を振っているのだ。  恐る恐る窓の下まで行くと彼女は玄関の方を指差した。入って来いということらしい。  戸惑わなかったといえば嘘になる。ただでさえ見知らぬ女の子に呼びつけられているのだ。でもそれ以上にその洋館に問題があった。女の子の住む古びた洋館は、まるで廃墟のように朽ちていた。いつから手付かずの状態になっているのか、外壁は塗装が剥げ、窓もところどころ割れている。  正直なところ気味が悪い。何かが化けて出そうな感じすらある。よくこんな所に住んでいられるな、とあの女の子の正気を疑わずにはいられなかった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!