ある友だち

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 玄関の扉は、特に施錠されているということもなくすんなりと開いた。玄関ホールは外観と同じく朽ちており、正面にでんと構える大階段に敷かれた臙脂色のカーペットはところどころ裂けて焦茶の床が顔を出していた。  床が抜けないだろうか、と心配しつつ僕は階段を上って女の子のいる部屋まで慎重に進む。  戸口からそっと中を覗くと女の子はさっきと変わらず窓辺にいた。外から見たときは、てっきり窓際に立っているものだとばかり思っていたが、その女の子は窓際に設置されたベッドの上で上半身を起こすように座っていた。 「いらっしゃい。よく来てくれたわね」女の子は僕に気づくと、青白い顔に精いっぱいの笑みを咲かせた。「さあ、こっちでお話ししましょ」  外見から見るに僕と同い年かその前後くらいの女の子は、見慣れない衣服を身につけていた。ふわりとしていてレースが襟や袖に施されたワンピースのような服──たぶん、ネグリジェというやつだろう。それを着た彼女はまるで童話に登場するお姫様のような、どこか浮世離れした感じすらあった。  彼女に導かれるように僕はベッドサイドに置かれた椅子に座った。それから部屋を見回す。
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