ある友だち

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 彼女の部屋は洋館のどの場所とも違った。壁紙も汚れていないし、部屋の中も整頓されている。壁際にある戸棚の上にはクマのぬいぐるみがちょこんと座っていたりと、なんというか生気を感じるというか廃墟っぽさがないのである。もっとも彼女が住んでいるのだから当たり前といえば、当たり前なのだが。 「どうしたの? そんなに女の子の部屋が珍しい?」 「あっ! いや、違うんだ。なんだか小綺麗だなって。ほら廊下とか玄関が……」そこまで言って言葉に詰まった。たとえ事実でも初対面の人間にそれをいうのは失礼というものである。  しかし彼女は自嘲気味な笑みを浮かべ、僕が続けようと思った言葉を躊躇なく言い放った。 「──廃墟みたいだった、でしょ?」 「いや、そんなつもりは……」 「いいの、気にしないで。手入れしてないのは本当のことだし。昔はこんなんじゃなかったんだけどね。全部私のせいなんだ。私の病気のせい」  病気? と僕が訊き返すと女の子は「そう」と頷いて詳しい事情を聞かせてくれた。
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