ある友だち

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 彼女によると高い治療費を稼ぐ為に父親が新たな事業に手を出し、そして失敗した。お金持ちだった彼女の家が没落し、それまで雇っていた使用人は全員解雇したという。  そうして屋敷を手入れする人がいなくなり、また壊れたとしても修理するお金がない為、そのまま放置しているそうだ。 「全部、私が悪いんだ。どうせ治らないんだから治療なんてしなくてもよかったのに」  掛け布団の上で組んだ手を一点に見つめながら彼女は暗い声を発した。まるでそこだけ重力が増したかのように重苦しい空気が充満する。 「……そういえば、どうして僕を呼んだの?」  話題を変えるべく絞り出し言葉に、はっとした彼女は取り繕うように再び笑顔になって、 「ごめん、呼んでおいて暗い雰囲気にしちゃったね」  とこちらにその青白い顔を向けた。 「いや、そういう意味じゃなかったんだけど。ただなんで僕なのかなぁって」 「ずっと部屋の中にいると、たまに言い知れないほど暗い気持ちになるんだ。それで窓の外を見ていたら、あなたが気づいてくれたようだったか思わず呼び寄せちゃった」
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