ある友だち

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 それから僕たちはしばしの談笑を楽しんだ。彼女は僕の話の一つ一つに驚き、感嘆した。スマートフォンを見せたときなんてまるでタイムスリップしてきた人みたいにびっくり仰天していた。そんな彼女の反応を見るたびに嬉しい反面、病気のせいで流行を知らないことを突きつけられているようで悲しくもあった。  そうして太陽が沈み始めた頃、僕は立ち上がった。 「日も暮れてきたし、そろそろ帰るよ」 「……もう、帰ってしまうのね」  寂しそうに俯く彼女。夕日を受けた長いまつ毛を見つめながら僕はいう。 「僕でよかったら明日も来るよ。あ、そういえば名乗ってなかったね。僕は宗介。君は?」 「私は優しい子と書いて、優子」 「いい名前だ。それじゃあ、また明日。優子」  それから毎日学校帰りに優子のところに寄った。時にはコンビニで流行りのお菓子を買って行ったり、家からゲームを持ってきたり、携帯プレイヤーを持ち込んで一緒に映画を観たこともあった。  僕が持ってきたものに目を輝かせて食いつく優子を見るとはとっても楽しい。彼女を幸せにしているぞ、という実感があるからだろうか。
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