ある友だち

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 放課後のそのひとときがいつしか僕の楽しみになっていった。  ある日、彼女へのお土産を買おうとコンビニへ行ったときのことである。飲み物コーナーで僕はふと足を止めた。なにも喉が渇いたわけではない。見つけてしまったのだ。あの流行りの飲み物を。  ベージュの液体の底に沈む黒い玉──タピオカミルクティーである。  たしかクラスの女子たちがしきりに話題にしていた気がする。  優子ほどではないがあまり流行に詳しくない僕でも知っている「今」を象徴する飲み物だ。いささかブームが去ってしまった感も否めないが、これならきっと優子も喜んでくれることだろう。  僕はそれを優子と自分の分の二本買い求めてから洋館へと向かった。 「現代人はカエルの卵を飲み物に入れるの!?」  タピオカを一目見た優子は顔を顰め、そんな感想を口にした。  いくら僕が「これはカエルの卵じゃなくて、デンプンで作った団子だよ」と教えても彼女は「カエルの卵」呼びをやめなかった。  しかしモチモチとした食感は気に入ったようで、あっという間にタピオカの虜になってしまった。
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