ある友だち

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 洋館に向かう前にコンビニに寄ってタピオカを買い、「これ美和から渡してあげて」と美和に渡す。 「渡すって誰に?」  と戸惑う美和に「これから僕の友達のとこに行くから」とだけ伝え洋館へ向かった。 「え、ちょっと、何ここ……」  荒れた洋館を見た美和は怯えながらそういった。 「大丈夫だよ。見た目はおっかないけど、ただ傷んでるだけだから」  僕も初めて来たときはこんな感じだったなぁ、とそう遠くない昔を懐かしみながら洋館の中へと入る。 「勝手に入って大丈夫なの?」 「安心して、ちゃんと家の人には許可をもらってるから」  廃墟のような廊下を進み、二階にある優子の部屋の前で足を止めた。開きっぱなしの戸口から顔を覗かせ、今日もベッドの上で窓の外を眺めている女の子に「優子、来たよ」と声をかけた。  パッとした笑顔で振り返った彼女は僕の背後に見知らぬ影を見つけ、その顔に警戒の色を浮かべた。 「幼馴染の美和だよ。悪い奴じゃないから安心して」  それから僕は美和に挨拶を促した。しかし美和は強張った顔のまま部屋の中と僕の顔を交互に見ている。 「どうしたんだ?」 「宗介、さっきから誰と喋ってるの?」
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