なんにもできないタカシ君

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「おおおおん!タカシぃ!タカシおおおおおおおおおおおおおん!!」  責任感過多なナンシー先生から逃れるため、理科の教科書に飛び込んだはずだったのですが、 「ホラ!超ウルトラアルティメットスーパーハイポネクストを添加する事により!そこらの雑草がとんでもない事になり何かもうスゴいのじゃ!」 間違って漫画の世界に入ってしまったようです。  現在、僕はうねうねと蠢くツタに身体を拘束されています。  いや、そうはならんやろ。ってな状況です。 「うひひっ!うひひひひっ!触手じゃ触手じゃ!捗るっ!捗るのうっ!」  雑草に持ち上げられる僕の足元で悦に浸っているのは、欄外やコマ割りに巣食う悪魔。 「うへへへへへへっ!秘部が出なけりゃ合法じゃ!男性であると予め断っておけば胸部に限り責め放題なんじゃ!!」  博士、です。 「おっほほほほおおおおおお!ふぅううううんペロペロペロペロ!タカシペロペロペロペロ!」  こと漫画においては、いわゆるツルペタのキャラクターとして描かれる事の多い方。  反面、ゆるめの学術書ではてっぺんの薄い白髪のお爺さんがまだまだ主流といえるでしょう。  それにしても男子、というシンボルさえ付ければ乳首解禁という謎理論は一体どうしたものか。 「ホレホレ!この状況で拘束相手を嘲るのが今どき女子じゃろ!?ざぁこざぁこ!ひひひひひ!」  幼女、老人のいかんを問わず、博士というキャラクターは推しも圧も強いというのがご愛嬌。  こちらもいわゆる『先生』というシンボルが付いてますが、ナンシー先生とは逆で、普段の抑圧の反動かオフだと弾けちゃう性質のようです。 「ちなワシ人魚の肝を喰っとる五十路!だから大丈夫大丈夫!オッスオラ合法ロリ!人気あっがーれええええええええ(-д☆)キラッ」  諸々の事情を鑑みてという事なのでしょうが、全く度し難い。 「博士、あの……僕なんか拘束しても誰も喜ばないので、あのですね?」 「浅薄な思考じゃのう、これだからモブはいかん」 「あ、モブっていった。傷付くなあ」 「モブをモブといって何が悪い。大体モブという立場の何がイヤなんじゃ」  見た目ちびっ子の妙齢博士は、底意地の悪そうな事をズバズバと言いますが、 「物語はいつだってモブから始まる。いつだって感謝しとるよ。お主がおるから、お話は進むのじゃ」 なんだかんだ気遣ってくれるのもまた、『博士』というシンボルの為せるものなのです。 「博士…」 「っちゅー訳で、お主はムチムチヒロインをこの場に召喚する撒き餌じゃ、ホレホレ、もっと大声で叫ばんかい」 「博士…」  僕は、モブキャラとして完成してる、とでもいうのでしょうか。 「呆れたり白けたりせず、お主はいつも新鮮な顔で泣き叫んでくれる。愛いのう、愛いのう。かわいいよタカシかわいい。ほうれペロペロペロペロ…」  この後、やってきたヒロイン達を拘束し、乳首を触手で隠しつつ服を破き悶えさせながら、大笑いしてるところ除草剤を落として割り「んなあっ!?」とかいって自分も触手にやられつつ、の辺りで僕はコマから外れたので急いで脱出しました。  それから先のページには、僕は登場しません。  やはりそれを完成なんて、僕は認めたくはないんです。
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