迷い道ミステリー

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 ***  先に一つ言っておくのは。私は息子にはまだ、スマホを持たせていないということである。  小学校の高学年になり、もう少し物の良し悪しが理解できる年になってから渡そうと考えていた。ネット犯罪に加え、ゲームでバカスカと課金されてはたまったものではないというのが大きい。うちの息子はゲームが大好きだった。今はスイッチのゲームを楽しんでいるが、スマホを与えればきっとアプリゲームにもハマってしまうことだろう。  ゆえに、初めてのお使いイベントの際も、彼はグーグルマップを使えない状態だった。その代わり、スーパーまでの地図を描いて渡している。スーパーまでは徒歩五分で、しかも道を二回曲がるだけで辿りつく場所だ。方向音痴の私でも、流石にスマホなしで行ける場所だと行っていい。そして、幼い頃から何度も息子をベビーカーに乗せて、あるいは手を引いて連れていった場所でもあるのだ。  ゆえに、此処に行くのに迷子になることなどありえない、と思っていたのだが。 「……ごめんなさい」 「どうしちゃったのよ、アンタ」  明らかにしょんぼりしている息子の手には、お金が入った財布が握られたまま。牛乳を買ってくることができないまま帰ってきたというわけだ。そして、帰りは随分遅かった。聞けば迷子になり、あっちこっちうろちょろした果てに学校に辿り着き、学校からの道ならばわかるのでそれでどうにか帰宅することができたというのである。  スーパーと学校はだいぶ距離が離れている。むしろ家から真逆の方向なのに、何でそっちに行ってしまったのだろう?一週間前、息子を連れてスーパーに行き、道を覚えさせたはずだったというのに。 「私も方向音痴だけど、あんたも大概ね……」 「ごめんなさい」 「いや、別に怒ってるわけじゃないのよ。もう一度練習して、道を覚え直しましょう?」 「うん」  その翌日。私はもう一度息子と一緒にスーパーに行き、道を覚えさせたのだった。この時、息子はしっかりメモを取っていたことを記憶している。メモの内容は見なかったが、多分道の特徴や目印を記録していたのだろう。  きっと今度こそうまくいくはずだ。私はそう思っていたのだが。 「うおーい!?」  さらに一週間後、二度目のおつかいチャレンジも彼は失敗してしまうのである。しかも、またしても学校に行き、そこを経由して家に帰ってくるということをやらかした。 ――な、なんでー!?何でそんなに道間違えるのアンタ!?  大混乱したのはむしろ私の方。  どうして彼は、毎度毎度道を間違えてしまうのか。
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