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トウモロコシは今の味
忘れた頃にくる、お母さんからの電話。
内容は無難な世間話。
私が元気なのか生存確認。
半分嬉しくて、半分申し訳ない気持ちになる。
お母さんは私に気を遣っている。
近所の幼馴染に2人目が産まれたとか。
東京に就職した同級生が会社を設立したとか。
そういう話をしなくなった。
私は、先を考えるのが苦手。
将来を見据えて彼氏を探すことはなく。
昇進する楽しみもない。
目の前で過ぎていくささやかな日常が、私の全て。
ワンルームのチャイムが鳴った。
お母さんからの宅配便。
ダンボールの中身は黄金が詰まっている。
日差しをたっぷり吸い込んだトウモロコシ。
夏の畑の匂いがする。
トウモロコシを茹でる。
今年の夏を、大口で頬張る。
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