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プルトップに火花を想う
誰かが線香花火に火を点ける。
咲いては消える、幽玄な火花。
えいっ、と捕まえて。
瓶の中に閉じこめてしまいたい。
心がささくれて固くなってしまったときに。
夕闇迫るワンルームで1人。
ぼうっと、瓶詰めの花火を眺めていたい。
そんな気分。
私には線香花火は似合わない。
だから、誰かが火をつけてくれるのを待つ。
ずるい大人になった。
発泡酒のプルトップに指先を添える。
上手く開かなくて、爪先が割れる。
いつか見た火花が、缶の上で弾けた。
そんな気がした。
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