プルトップに火花を想う

1/1

21人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ

プルトップに火花を想う

誰かが線香花火に火を点ける。 咲いては消える、幽玄な火花。 えいっ、と捕まえて。 瓶の中に閉じこめてしまいたい。 心がささくれて固くなってしまったときに。 夕闇迫るワンルームで1人。 ぼうっと、瓶詰めの花火を眺めていたい。 そんな気分。 私には線香花火は似合わない。 だから、誰かが火をつけてくれるのを待つ。 ずるい大人になった。 発泡酒のプルトップに指先を添える。 上手く開かなくて、爪先が割れる。 いつか見た火花が、缶の上で弾けた。 そんな気がした。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加