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満月最中
雲一つない満月の夜。
深い青の天蓋は夜の海面みたい。
私は魚。
海の底から満月を仰ぐ、名もなき魚。
なんちゃって。
硝子のボウルに水を入れてベランダに運ぶ。
今宵の満月は優しいから、すぐに来てくれるはずだ。
ベランダにボウルを置き、水面が静かになるのを待つ。
夜更かししているセミの声。
わずかに聞こえる風鈴の音。
頬を撫でる生温い微風。
息をゆっくり吐き終えるかのように風が止む。
ボウルを覗き込めば、ほら。
月光がふんわり落ちている。
今夜のお供は貰いものの最中。
まんまる、まるまる。
満月最中。
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