なつ、ひとかけら

三角形を懐古する

夏風に揺れる一面の緑。
聞こえるのは軽やかな調べ。
並ぶ青田ともこもこの入道雲。

眺めていると胸の奥が温かくなる。
水田に懐かしさを覚えるのはなぜだろう。

幼い頃、水田で友達と遊んだ。
思い切り遊んだ後に食べた、お母さんのおにぎり。
具はなくて、味付けは塩だけのシンプルな味付け。

すごく美味しかったな。
お腹がペコペコだったから？
お母さんが握ったから？

水田を覗き込む。
映るのは見慣れた自分の顔。
土手を走り回る面影はどこにもない。
私はすっかり大人になった。

水面にあの日が映る。
おにぎりの味がよみがえる。