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星を産む人
ドラッグストアで新しい目薬を選ぶ。
贅沢で、心ときめく素敵な時間。
シンプルで洗練された容器。
薬液は思いを馳せる鮮やかさ。
夏蜜柑イエロー、咲き誇るツツジの赤、清らかな無色透明。
成分で選ばなきゃいけないけど、色が気になってしまう。
どの目薬を我が家へお迎えしようかな。
「目薬をお探しですか?」
声をかけてきたのは、ドラッグストアの店員さん。
清潔そうな白いユニフォーム。
後ろでまとめられた長い髪。
スパンコールように輝く黒目。
つい、じっと見てしまう。
ああ、そうか。
瞳に映るのは店内の照明。
彼女は、照明を星のまたたきに変える名人なのかもしれない。
「ドライアイなら、これがおすすめですよ」
目薬を買った。
おすすめのやつ。
冷房の効いたドラッグストア。
涼を求めるフリをして、つい彼女を探してしまう。
笑顔を見ると、元気になれるから。
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