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 たまごが転がる。  どこまでも転がっていく。  ひとりでに転がっていく。  それは、中にヒナが入っているから。  生まれたくないヒナが入っているから。  だから転がる。  どんどん転がる。  勢いをつけて転がっていく。  なぜなら、たまごは思ったから。  生きていく事は大変そう。外の世界をうかがって、そう思ったから。 「この子大丈夫かしら」  なのに。  心配した親が卵を割ろうとするので、ヒナが入った卵は逃げ続けなければならなくなった。  割られたくないなら、逃げるしかない。  とどまっていたら、危ないから逃げるしかない。  けれど、  けれども。  卵はどこかでピッタリ停止。  うんともすんとも言わず、そこで止まってしまった。  ヒナがどんなに動かそうとしても、たまごは動いてはくれない。  別の種類の卵をなくしたばかりの鳥が「あら私の卵、こんなところにあったのね」と言って、大事に大事に抱えて、持っていってしまっているから。  だから、別の巣の中にさらわれたその卵は、「私違う子です」とは言えず、ずっと卵の中にいるしかなくなった。  そしてまた「こんなに長くふ化しないなんて、中にいる子供は大丈夫かしら」となって、割ろうとした鳥から逃げだす事になってしまうのだった。
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