1人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
01
たまごが転がる。
どこまでも転がっていく。
ひとりでに転がっていく。
それは、中にヒナが入っているから。
生まれたくないヒナが入っているから。
だから転がる。
どんどん転がる。
勢いをつけて転がっていく。
なぜなら、たまごは思ったから。
生きていく事は大変そう。外の世界をうかがって、そう思ったから。
「この子大丈夫かしら」
なのに。
心配した親が卵を割ろうとするので、ヒナが入った卵は逃げ続けなければならなくなった。
割られたくないなら、逃げるしかない。
とどまっていたら、危ないから逃げるしかない。
けれど、
けれども。
卵はどこかでピッタリ停止。
うんともすんとも言わず、そこで止まってしまった。
ヒナがどんなに動かそうとしても、たまごは動いてはくれない。
別の種類の卵をなくしたばかりの鳥が「あら私の卵、こんなところにあったのね」と言って、大事に大事に抱えて、持っていってしまっているから。
だから、別の巣の中にさらわれたその卵は、「私違う子です」とは言えず、ずっと卵の中にいるしかなくなった。
そしてまた「こんなに長くふ化しないなんて、中にいる子供は大丈夫かしら」となって、割ろうとした鳥から逃げだす事になってしまうのだった。
最初のコメントを投稿しよう!