2. 静寂

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「こかげ、大丈夫?」 「うん…」 「休む?」 「休まない…」 皆勤賞を取ることを目標にしている私に休む(欠席)の二文字はない。 「いってきます」 「あっ、ちょっ!」 問答無用で出ていく。 確かに昨日はああなってしまったけれど、 大丈夫。 私の世界をモノクロにすればいい話だから…。 「はぁ、はぁ、」 「先輩こんにちはー!」 「⁉︎」 ニコニコ笑顔の須藤くんと会う。 「あっ、えっと…」 「一昨日ぶりですね!」 「そ、そうだね…」 「さあ、行きましょう!」 須藤くんってこんなに元気な子だったっけ? 「へぇ、先輩バイトやってるんですね」 いつのまにかいろいろ言ってしまった。 須藤くんって本当にフレンドリー…。 「姉の頼みで」 「お姉さんと仲良いんですか?」 「まあ…」 「自分は弟がいますけど、あんまり話したりしないですね」 「そ、そうなんだ…」 「兄弟で仲がいいってあんまり聞きませんよね」 「うん。そうだね。」 「まあ、そういうお年頃なんだと思います」 須藤くんみたいな優しそうな人間が微笑むと神がかっているように見える。 なぜか後ろから後光が…。 「あっ、そういえば先輩の落とし物かもしれないんですけど…」 「どれ?」 「これです」 クローバーが押し花にされたしおり。 これは確かに私のだ。 「ありがとう」 「お役に立てて良かったです!」 「須藤くんは元気だね」 「そんなことありませんよ」 「でも、私は須藤くんみたいに反応できない」 「先輩はいつも通りでいいですよ」 「でも…」 「先輩のいつも通りは誰かにとっての幸せですから」 「そ、そうかな…」 「きっとそう思える瞬間がきますよ」 キラキラと微笑む須藤くん。 やっぱりこういう人は違う。 姉みたいな明るくて綺麗できらびやかな人は私との間に境界線があるみたいだ。 行動力があって、 コミュ力があって、 容姿がいい。 それだけで私はなぜだか置いてきぼりな気分になる。 それで、優しさという完全体の美しさを持ち合わせる人々。 それがとても羨ましくて憎たらしい。 どうして私みたいなミジンコにこんなことするのかな。 世界って辛い。 「先輩?」 「どうしたの?」 「もう下駄箱ですよ」 「あっ、」 「先輩もうっかりがあるんですね」 そんなニコニコキラキラで見つめられると恥ずかしい。 「じゃ、じゃあね」 「また来週会いましょう!」 大きく手を振ってくれる。 高校生でこんなに純粋な子は初めて見た。 そして、クラスにつけば私は不動の名もなき点。 モノクロの世界で生きる暗い人間。 そんな人間に光は差すのだろうか?
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