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あっという間に水曜日になった。
図書室の扉を開けると、そこにはもう須藤くんがいた。
「ごめんね」
「大丈夫ですよ。ちょうど来たとこなんで。」
ニコニコと笑顔を浮かべている須藤くん。本の整理でもしているのだろう。
「私も手伝うよ」
「じゃあ、これを」
渡された分は明らかに少ない。
うん。そういう気遣いってモテるんだろうな。
「終わったらすぐに戻ってくるね」
「わかりました!」
片付けているうちに気づいたが、これほとんど同じ場所の本だ。
そういう気遣いがモテるんだろう。
「終わったよ。須藤くん。」
「こっちもあともう少しなんで」
「手伝うよ」
「すみません……」
何冊かを取り出して戻していく。
その繰り返しをしていたら作業は終わった。
「ありがとうございます!」
「どういたしまして」
「さすが先輩ですね。仕事が早いです!」
「須藤くんもすごいよ」
「いえいえ、そんな」
やっぱり須藤くんと話してるとなんていうか落ち着くし、アニマルセラピーみたいな感じなんだよね。そう思うと須藤くんに犬の耳としっぽが…。
「どうしましたか?」
「カウンター行こっか」
「はいっ!」
☆.•.**°◦.・.★
夕日が図書室の中に入り込む。
叙景できないほどの美しさと儚さがそこにあった。
「先輩、今日も終わりですね〜」
「そうだね」
「ふぁあ」
隣であくびをする須藤くん。
眠くなるのも仕方ないなと思った。
「あのさ、須藤くん」
「なんですか?」
「私、須藤くんに言われて困っている人を助けた…んだけどさ、」
「はい」
「須藤くんはどう思う?」
「えっ、そうですね…」
沈黙が訪れる。
二人きりの図書室にはすごく重たいものだった。
「いいことだと思います。って言うと無責任な気がしました。」
「どういうこと?」
「困っている人を助けるのはいいことです。でも、その人の困っているを解決するにはすごく大変だと思います。一言で『いいね』って言うと、なんだかそんな大層なことがちっぽけに感じて、頑張った人に無意味さを与えるような気がして、嫌だなって思いました。」
「須藤くん…」
「もっとたくさんの言葉で褒めれたらいいんですけど…」
そうか。須藤くんは昔から褒められてきた人だ。
私にとってはその一言がすごく嬉しい。
でも、やっぱり人は価値観が違ってくる生き物なのだと理解した。
「須藤くんはすごい子だよ」
「へっ?」
思いやりがあっていい子だよ。
でもね、人の嫌なことと自分の嫌なことが同じだとは限らない。
だから、他人を自分に引き寄せて考える時は
常識の範囲内
で主に考えるのがいいと思う。
それができないことを知って嬉しく思う私は最低だ。
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