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『楽しそうで羨ましいなぁ』
「助けてください!」
私があまり服を持っていないことや、おしゃれについて全然わからないことをこと細かく説明する。
それを穂波さんは頷きながら聞いていた。
『私も全然持ってないよ』
「そんな…」
『それなら学校帰りに一緒に買いに行こう』
「本当ですか⁉︎」
『今週の何曜日なら空いてる?』
「木曜なら行けます」
『こかげちゃんの学校の最寄駅で待ってるね』
「はい」
『おやすみ』
「おやすみなさい」
ああ、また穂波さんに会えるんだ。
穂波さんとは少し不思議な縁がある。
よく知らない人の電話番号になぜかかけた私も、
私のことをよく知らない穂波さんが拒絶しなかったのも、
この縁の不思議な部分だ。
普通だったらこんな繋がりなんてありえない。
だけれど、穂波さんとは不思議な力で繋がっている気がする。
そして、穂波さんは強い人間だ。
私が過去のことでくよくよしていることも、穂波さんならすぐ乗り越えられるのだろう。
木曜と土曜の用事に胸を弾ませながらベッドに入る。
きっと寝れるだろうと確信しながら。
☆.•.**°◦.・.★
眠ろうとした。
でも、目だけしか閉じれていなくて、頭と体が眠りを拒否している。
あの夢を見たくないだとか、その夢がまた現実になるんじゃないかとか、そういうことがちらちらと舞っているから眠れない。
「楽しいこと…」
桧山さんと水族館に行くことがとても楽しみだ。
自分がなんだか自分じゃないようないい気持ちになる。
それに、感謝の言葉の重みが誰よりも重かった。
その前に穂波さんとお買い物にも行く。
穂波さんは私が会ってきた人の中で一番優しい。
誰かを拒絶するなんて到底考えられない。
須藤くんとの委員会も楽しい。
笑顔を常に向けてくれて、自分まで明るい気持ちになれる。
まだまだ足りないところもあるけれど、大人びていて気遣いがすごかった。
三人とも、すごくステキで、誰かに好かれて、人として『できる』人だ。
楽しいとかよかったとかわからないけど、
自分が上から目線でいいとも言えないけど、
それでも、やっぱり、三人といるととても明るくて清々しい気持ちになれる。
みんな私のことを考えてくれる。
私にはそんな優しい人がいるから。
どんなに昔の私が酷い人間でも受け止めてくれる。
酷いことなんて絶対に言わない。
私の全部をわかってくれるだろうから…。
安心して眠ってよ……。
全て受け止めて眠って、よ………。
それでも眠れない私にとてもとても怒りがわく。
そんな明日が来なければいいとも思う。
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