4. 享楽

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『楽しそうで羨ましいなぁ』 「助けてください!」 私があまり服を持っていないことや、おしゃれについて全然わからないことをこと細かく説明する。 それを穂波さんは頷きながら聞いていた。 『私も全然持ってないよ』 「そんな…」 『それなら学校帰りに一緒に買いに行こう』 「本当ですか⁉︎」 『今週の何曜日なら空いてる?』 「木曜なら行けます」 『こかげちゃんの学校の最寄駅で待ってるね』 「はい」 『おやすみ』 「おやすみなさい」 ああ、また穂波さんに会えるんだ。 穂波さんとは少し不思議な縁がある。 よく知らない人の電話番号になぜかかけた私も、 私のことをよく知らない穂波さんが拒絶しなかったのも、 この縁の不思議な部分だ。 普通だったらこんな繋がりなんてありえない。 だけれど、穂波さんとは不思議な力で繋がっている気がする。 そして、穂波さんは強い人間だ。 私が過去のことでくよくよしていることも、穂波さんならすぐ乗り越えられるのだろう。 木曜と土曜の用事に胸を弾ませながらベッドに入る。 きっと寝れるだろうと確信しながら。 ☆.•.**°◦.・.★ 眠ろうとした。 でも、目だけしか閉じれていなくて、頭と体が眠りを拒否している。 あの夢を見たくないだとか、その夢がまた現実になるんじゃないかとか、そういうことがちらちらと舞っているから眠れない。 「楽しいこと…」 桧山さんと水族館に行くことがとても楽しみだ。 自分がなんだか自分じゃないようないい気持ちになる。 それに、感謝の言葉の重みが誰よりも重かった。 その前に穂波さんとお買い物にも行く。 穂波さんは私が会ってきた人の中で一番優しい。 誰かを拒絶するなんて到底考えられない。 須藤くんとの委員会も楽しい。 笑顔を常に向けてくれて、自分まで明るい気持ちになれる。 まだまだ足りないところもあるけれど、大人びていて気遣いがすごかった。 三人とも、すごくステキで、誰かに好かれて、人として『できる』人だ。 楽しいとかよかったとかわからないけど、 自分が上から目線でいいとも言えないけど、 それでも、やっぱり、三人といるととても明るくて清々しい気持ちになれる。 みんな私のことを考えてくれる。 私にはそんな優しい人がいるから。 どんなに昔の私が酷い人間でも受け止めてくれる。 酷いことなんて絶対に言わない。 私の全部をわかってくれるだろうから…。 安心して眠ってよ……。 全て受け止めて眠って、よ………。 それでも眠れない私にとてもとても怒りがわく。 そんな明日が来なければいいとも思う。
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