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などと内心ぶー垂れながら、盛り上がっている他部署をよそに、いつものように不機嫌に請求書の処理を進める。今の屁理屈をまとめると、「仕事つまんない! 遊びたい!」だ。
私は自他ともに認めるいつまでも学生気分が抜け切らないちゃらんぽらんな性格をしている。今年で社会人四年目。こんなんでいいのかな? と正直ときどき思う。
――ひょっとしたら、気づかないところで周りの人にたくさん迷惑かけているのかも?
それってとても怖いし、不安になる。だから、なるべく自分の性格については考えないようにしていた。そのせいもあって知り合いの雀荘からも、最近は足が遠のいてしまっている。
今も不安な気持ちがひょっこり鎌首をもたげたけど、請求書に集中して意識を逸らそうとした。すると、カタカタとパソコンのキーボードを叩く私の背後から声が掛かった。
「藤村さん? お久しぶりです!」
振り返ると、そこには目元の涼し気な細身の男性社員が立っている。
「嬉しいなぁ。また藤村さんと会えるなんて」
その男性社員は本当にうれし気な様子で私に笑顔を向ける。でも、私にはさっぱり彼と出会った記憶がなかった。
年齢は私と同じくらいだろうか。大学? 私が入っていた麻雀サークルにはいなかった。ゼミにもいなかったけど、同じ学部? いやいや。こんなイケメンいたら覚えている。たった三年前なのだから。
もしかして誰かの結婚式かどこかの合コンで会ったのかもしれないと思いつつ必死に記憶の糸を手繰っていると、彼は苦笑した。
「忘れちゃったみたいですね。僕のこと」
「す、すみませーん。最近、記憶喪失気味で」
「フフ。記憶喪失ですか? ドラマみたいですね」
「二人で主演務めちゃいます?」
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