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緊張とわくわくで眠れぬ夜を幾日か過ごして迎えた土曜日の午後、新宿駅南口の花屋の前で待っていると、ツルスケが品の良いカジュアルな服装で現れた。
「ゴメン! 待たせちゃったかな?」
「そうだよ〜! 待ったよ〜! 10年くらい待ってたよ~!」
「ハハハ。中学卒業からずっと待っていた計算だね」
これ、もうデートだよね? デートっていうことでウィキペディアに載せていいレベルだよね? Chat GPT に聞いたら、きっとこう答える?
『この会話はデートの開始時に恋人同士で交わされる可能性が極めて高いもので、順調に交際を重ねれば結婚も期待できます。デートかどうか正確に判断したい場合、次の質問をして下さい』
「ねえ。ツルスケってモテるでしょ?」
するとツルスケは苦笑した。
「別にそんなことないよ。彼女もいないし。ユウちゃんの方こそ昔からモテてたよね?」
キター!! ロン! リーチ一発、ドラドラ、国士無双!!
私は今にもサンバを踊り出したい気分で足がもつれそうになりながら、ツルスケと駅ビルの中のカフェに向かった。
本社の人達の人間関係を事細かに私が語ってあげると、ツルスケはその熱弁振りに若干引いたようだった。
「……すごいね。不倫してるとか、離婚しそうとか、子供が引きこもりとか……そんなことまでユウちゃん知ってるんだ」
「ちょっと! 私、基本的にゴシップは嫌いなんだからね。でも、なぜか皆私にそういう話をしたがるの。ホントどうしてかなぁ」
不満そうな私にツルスケが口ごもりながら言う。
「……聞きたそうだからじゃない?」
「だから違うって! その証拠にツルスケのこと知らなかったでしょ?」
私が拗ねたような顔をすると、ツルスケは苦笑した。
「僕は去年入社したって言っても、大学院の卒業時期が日本とずれているせいで九月入社だから。ほんの半年間OJTしていただけだもん。人事部のメールに目を通さないなら、東京にいるユウちゃんが知るわけないよ」
「でも、ミキポンとか九州に出張行ってるんだから、教えてくれても良いのに。さては……」
私が同期のミキポンとの友情を疑い始めるような表情を浮かべると、ツルスケが慌てて話題を変える。
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