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私の中で何かが崩れ落ちた。自分自身のことも、これまでの人生も全部嫌になって、この世界から消えてしまいたくなる。大きくて真っ黒な渦の中にちっぽけな自分がずるずると飲み込まれて行くのがわかった。
視線を逸らしたまま固い表情で席を立とうとしたそのとき、私の手をツルスケがスッと握る。
「ユウちゃん、ちょっと待って」
「放してよ! 私のこと嫌いなんでしょ!」
「そんなことないよ。良いから座って」
私が口をへの字にして再び腰を下ろすと、ツルスケは言った。
「皆から無視されるのってとても辛いんだよ。人の心は見えないから、無視する人達が僕のことをどんなに嫌な人間だと思っているんだろう? ってどうしても考えちゃうからね。まるで空気にカミソリが混じっているみたいに、呼吸しているだけで胸が痛いんだ」
何を言いたいのか推し量りかねている私に、ツルスケは穏やかな口調で続ける。
「中学生の頃、笑顔で毎日僕に話しかけてくれるのはユウちゃんだけだった。やってることはちょっとひどかったけど、それでも僕はユウちゃんといるときだけ自分が独りぼっちなことを忘れることができたんだ。嬉しかった。ユウちゃんがいなかったら登校拒否になっていたかもしれない。あのときは本当にありがとう」
意外な言葉に思わず潤んだ瞳を私が見開くと、ツルスケはニコッと笑った。
「これからまたよろしくね。ユウちゃん」
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