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晴天の中、パレードは行われた。このパレードのために、特大の馬車が用意された。その馬車を引くのは、象よりも大きな二匹の黒馬だった。無理矢理に集められた民衆が、町の中心部を進む馬車を、ぼんやり眺めていた。
「良い光景だな。魔大臣よ」
魔王は馬車から顔を出し、パレードを見に来た民衆達を見回す。馬の上にまたがって手綱を握る魔大臣が、大きくうなずく。
「ええ、おっしゃるとおりでございます。おや」
その時、馬が立ち止まる。馬の進行をさえぎるように、一人の少年が立っていた。
「魔王よ。俺は勇者だ。俺がお前を退治してやる」
まだその顔に幼さの残る少年が、手に持ったサビついた剣を魔王の方へと向ける。
「がっはっは。小僧、俺を倒そうというのか。いいだろう。相手してやる」
魔王は馬車を降り、勇者と名乗る少年の前に立つ。
「くらえ」
勇者は、剣で魔王の胸を切りつける。しかし、文字通り、全く刃がたたなかった。
「ふん。口ほどにもないな」
魔王が少年に手をかざすと、掌から突風が巻き起こる。勇者はその場に立っていられず、ずっと後ろまで飛ばされてしまった。
「うぐっ」
勇者は頭を打ちつけ、仰向けに倒れていた。魔王は右足を振り上げ、横たわる勇者を踏みつける
「勇者よ。お前のような弱い人間が俺を倒そうなんて、百年早いわ」
勇者は苦しそうな顔を浮かべながらも、魔王をにらみつける。
「いいか。お前と俺との戦闘能力はあまりにかけ離れている。お前が俺に追いつくなんて、この国の外れにある森の奥に住む賢者ジーナスに修行をつけてもらうくらいしか方法はないだろう。そして、そんなサビついた剣で俺を倒そうなんて、あまりに愚かだ。俺の体に傷をつけるなら、魔の谷に封印されているフィエルボワの剣でも手に入れることだ」
それだけ言うと、魔王は馬車に戻る。
「お前など、殺す価値もない。じゃあな」
パレードは、何事もなかったかのように再開された。勇者は、悔し涙を流しながら、馬車が進んでいく様子を見ていた。
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