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魔王がこの国を支配して、十年がたった。魔獣の監視は続き、民は半ばあきらめたように、魔王に屈していた。
「魔王様。報告があります」
ある日、魔大臣が魔王の元に報告に来た。
「どうした。何かあったか」
「はい。実は、勇者が、魔王様を滅ぼそうと計画しているとのことです」
「なんだと。どこのどいつだ」
「はい。それは、十年前、パレードで魔王様におそってきた少年です」
「そうか。あいつか」
魔王は玉座に深く腰掛け、目を細める。
「どうしましょうか。ひっ捕えましょうか」
「ふん。かまわん。放っておけばいい。そんなことより、明日、パレードをするぞ」
「パレードですか? 命を狙われている状況で、パレードなんてしたら、 殺してくださいと言っているようなものです」
「うるさい。俺がやりたいからやるんだ」
魔大臣は、大きくため息をつく。
「魔王様、もしかして、今の状況を楽しんでいませんか」
「楽しむ?」
「はい。魔王様は、あの少年が"化ける"ことを想像していたのではないですが。それで、あの時、賢者のことや、剣のことを教えたのでしょう」
「そんなわけないだろ。俺を倒そうなんてやつがいるなんて、不愉快だ」
「そうですか。それは失礼しました」
魔大臣は深く腰を曲げる。
「魔大臣よ。それより、ある人間をここにつれてくるんだ」
「ある人間、ですか?」
「そうだ。その人間とは……」
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