魔王として生きる道

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魔王のパレードは、予定通り行われた。あの日と同じ、気持ちの良い快晴だった。 「魔王、今日こそは、お前を退治してやる」 目の前に現れたのは、あのパレードの日、魔王にサビついた剣で向かっていった勇者だった。あの時と比べて、一回りも二回りも体は大きくなり、凛々しい顔つきになっている。 「はっはっは。誰かと思えば、いつぞやの小僧か。良いだろう。相手になってやる」 勇者と魔王はそれぞれ剣を抜き、にらみ合う。 「うおおお」 勇者が剣を振りかざす。魔王は自分の剣で、その太刀を受ける。 「うぐ」 勇者の剣の重さに、魔王は一歩二歩と後ずさる。 二つの剣が、幾度となくぶつかり、鋭い音が町に響く。両者とも、全く引かなかった。 「ふっふっふ。勇者よ。強くなったな。しかし、俺と互角に戦えると思うなよ」 魔王は勇者に向かって、左の手のひらを向ける。そこから、炎が勢いよく噴き出した。 「ぐわああ」 勇者が炎に包まれた。 「残念だったな。勇者よ。これで勝負あったな」 「甘いな。魔王」 「なに?」 炎の中から、勇者が飛び出し、鋭い剣が魔王を突き刺そうとする。魔王は慌てて後ろに飛び、その斬撃を交わす。 「お前が炎の魔術を使うというのはすでに知っている。それに備えて、聖なる糸で編んだ服を着ているから、問題ないのさ」 「なるほどな」 魔王は思わず、笑ってしまう。知力、体力、勇気、技術、全て勇者として申し分ない。久しぶりに手応えのある人間と、剣を交えることができた。 「勇者よ、お前の実力を認めよう。ただ、これを見ても、威勢をはっていられるかな。おい、魔大臣」 「はっ」 馬車の中から、魔大臣が現れる。その横には、一人の女性が縄で縛られていた。 「な、どういうことだ」 勇者が急に、焦った表情を見せる。 「勇者様」 その女性が叫んだ。潤んだ目からは、今にも涙がこぼれそうだった。 「がっはっは。この女がお前の恋人だということは知っている。取り引きしようか、勇者よ。お前の命を差し出すなら、この女を助けてやろう。嫌なら、今すぐこの女の首を斬る。さあ、どうする」 勇者の顔に、苦悶の表情が浮かぶ。 「勇者様、私のことは気になさらず、魔王を倒してください」 女性が必死に訴える。 カラン。勇者の手から、剣が滑り落ちた。 「その女性を、助けてくれ」 「勇者様!!!」 「がっはっはっはっはっは」 女性がむせび泣く横で、魔王の高笑いが響いていた。
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