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それから数回の逢瀬を経て、ミオは完全に眠れるようになった。僕たちは毎回、理想の睡眠の形を模索している。
幸せを体現したようなミオの寝顔を見る度に僕は不思議といけないことをしている気分になる。
だから、1ヶ月なんて眠りから覚めたときのようにあっという間だったんだ。
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「ねぇ、ヤス。今日は過去のデータから星空というものを再現してみたの。今は灼熱化で夜の星は見えないけれど、かつての人達はこの空を眺めながら眠っていたのよね」
「らしいね。綺麗だ。今日こそ夢が見れることを祈って」
今日はミオに会う最後の日だ。ミオに夢を見させてあげることはできなかったけれど、僕たちは道中沢山話をして、笑って、心を交わすことが出来た。
僕の1時間とミオの1時間の価値は違う。
僕はこの夢のような時間を胸にしまって、これからはミオの代眠者としてミオに会うこともなく、そっと消えよう。
「さようなら、ミオ」
僕は手紙を置いて、静かに黒服と部屋を出た。
これで平穏に全てが収まるーーそう、思っていたのに。
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