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僕を乗せた車は、見知らぬ街の見知らぬ倉庫街に向かっていた。
「で、どうして貴方が僕を誘拐しているんですか......!」
「これは天津澪を陥れる最初で最後のチャンスだからだ」
僕を毎回送迎してくれていた筈の黒服が、僕を暗い倉庫に閉じ込めようとしている。当然、僕だって抵抗するけれど、14歳の眠ってばかりの細腕で押し返せるドアなんて一枚もありはしない。
抵抗も虚しく分厚い鉄の部屋に閉じ込められ、電子鍵をかけられてしまった。手枷や足枷がないのは、代眠者の身体の弱さを誰もが知っているから。
「明日は天津澪と後藤嶋公子の参加する研究報告会がある。明日の分の天津澪の睡眠はーー」
外から何か勝ち誇ったような声が聞こえる。しかし、眠ること以外に取り柄のない僕にはなす術もなく、意識が落ちていく。
「なんで......」
下級国民の僕には上級国民の間で起きている足の引っ張り合いなんか理解出来る筈もない。
『あなたが送ってくれる睡眠のデータ、私にとっても合ってるの』
側に居られなくても、影から支えられると思っていたのに。
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