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代眠者と受眠者には相性がある。通常、代眠者のつくった睡眠データは会社ごとにランダムに受眠者に渡される。受眠者が8時間の睡眠時間を得るには、代眠者の16時間の睡眠時間とされている。
しかし、相性の良い相手だと代眠者の睡眠時間がソックリそのまま受眠者に反映される上に、集中力の向上や解析能力の上昇、美肌効果等、諸々のメリットがあることが明らかになってきたのだ。
僕は先日、ある大物との波長が合うことがわかり、特別待遇をうけている。
商売敵が敵と波長の合う代眠者を狙ってライバル会社のパフォーマンスを落としたりといった事件もあり、代眠者の情報は機密事項となっている。相手が大物であればあるほど、受眠者を陥れるために、代眠者が狙われるのだ。一日の半分以上を寝て過ごす代眠者は弱い。肉体的にも、社会的にも。
(僕が眠ることで僕じゃない優秀な誰かが起きて、活動出来てる。だから、生きて帰らないといけない。従順に、穏便に。でも、いざという時は弱みにならないように死ねというルールだ)
僕は右の犬歯に舌を当てる。
「私はミオ。あなたの受眠者よ」
ミオと名乗る少女は極秘と書かれたデータで僕と彼女の繋がりを証明してみせた。
「え......」
まさか、とある大物その人が僕を誘拐しに来るとは思わなかったが。
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