あなたの代わりにおやすみを

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* 「寝れないわ」  困ったことにミオは全く寝てくれなかった。もちろん、何もしなかったわけじゃない。僕だって安眠用の音楽もかけたし、ハーブティーも入れ、少し躊躇いながらもマッサージすらした。けれど、伊達に13年も眠っていないわけではないのだ。身体が睡眠という概念を忘却している。 「そうだ。最高の環境ならーー」  僕は眠るために日々調べていることを思い出した。 「例えば天日干しをしている布団の上に寝転がると気持ちが良い、って聞いたことがある」  実際に試したことはないけど、と言いながら僕は想像した。僕の睡眠の質が良いのには理由がある。良質な睡眠を取るためにいくつか入眠前に思い浮かべるシチュエーションのストックがあるのだ。 「天日干し?」 「昔、太陽の下で布団を干すといい香りがしたんだって。他にも公園の芝生で寝転んだり、ハンモックに揺られながらなんていうのも気持ちがいいらしいよ」 「何それ......楽しそう!」  ミオはキラキラした目でこちらをみている。しまった。思いつきで話すんじゃなかった。 「実行するなら、準備と金銭と時間が必要。今日はひとまず帰してよ」 「そう」  ミオは心底残念そうな顔をした。手順を黒服に伝えれば準備はこちらでするからと言われ、僕は会社に穏便に戻されることになった。
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