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黒服は僕をまた車に乗せると、サングラス越しにこう告げた。
「この1ヶ月までだ」
「え?」
「澪様の願いをこの1ヶ月で叶え、この茶番を終わらせろ。澪様は天才でこの国の宝だ。来月には研究報告会もあり、この調子ではライバルの後藤嶋公子に先を越されてしまう」
「わかりました」
下級国民の僕と上級国民のミオでは立場が違う。
「ここで結構です」
会社の前まで車で黒服に連れて来てもらった僕はお礼を告げた。誘拐犯にお礼を言うのは変な気持ちだが、暑い中歩かなくて良いのは助かったのだ。
「ではまた今度」
会社についた僕は何故か相当テンパっている担当者から、今後もミオに呼ばれたら付いていくように言付かった。僕は眠かった。個室に着いた時には翌日まで起きることはなかった。だから、MINNEの上層部で起きていることなんて知りもしなかったのだ。
「稀代の天才、天津澪の代眠者が我が社にいるなんて!」
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