18人が本棚に入れています
本棚に追加
◆
ふと、気が付くと彼女が目の前で不思議そうに首を傾げている。
あれ? 今のは?
「どうかしたんですか?」
「いや……。なんでもないよ」
彼女の顔の不思議そうな顔を見て、ふと思い出した。この子を僕はどこかでみたことがある。
「あれ? どこかで会ったことある?」
思わずつぶやいていた。彼女は無表情に答える。
「ありますよ。私の名前は最上最寄。珍しい名前なので憶えているでしょうか?」
「……最寄さん。確かに珍しい名前だね」
「私はこの名前嫌いです。最上に最も寄っている。名前負けもいいところです。親もどういうつもりで付けたのか聞きたいです」
「貴方も珍しい名字なので少しは気持ちが分かってくれるかと思うのですが。片白蒼汰くん」
ん? 今、どうして僕の名前を。名乗ったっけ?
「どうして僕の名前を知ってるの?」
思ったことを口にすると最寄さんは一瞬驚いた表情をした後に諦めたように暗い表情をうかべる。
「私は蒼汰と同級生なんですよ。やっぱり覚えてないんですね。仕方ないです。覚えてなくても無理はないと思います。私は地味な人間だったし、誰かに覚えてもらっているほどの価値のある人間ではなかったから」
「そんなことはないよ」
ふっ。と自嘲的に最寄が笑った。しかし、すぐに無表情になって言う。
「ありますよ」
「私は人に迷惑ばかりをかけて生きてきたので。これ以上誰かに迷惑をかけてまで生きていたくないんです」
「私は生きているだけで人を不幸にするのですから」
最初のコメントを投稿しよう!