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自殺を止めるゲーム
時刻は幽霊さえ眠っていそうな深夜二時を過ぎた頃。世界は静寂に沈んでいても見下ろす町には星々の海のように明かりが輝いている。
命が存在することを許さないような暗闇にあらがうように光は存在を主張していた。強い風が顔を殴りつけてくる。その風を手で遮りながらビルの屋上に出る。
誰もいないだろうと思っていたのだが、そこには虚ろな目をした一人の先客がいた。
綺麗な女の子だった。同い年ぐらいだろうか。ぼんやりとした表情でビルの下を眺めている。それ自体は問題は無い。問題は彼女が柵を超えた先に立っているという事だろう。あと一歩足を踏み出せば空に投げ出される位置に彼女は立ち尽くしている。
表情は乏しく目に光はない。今すぐにでもその身を空中に投げ出してしまいそうだった。
「あの……そんなところにいると危ないよ」
僕が彼女に声を掛けると、彼女はゆっくりとこちらを振り返った。
「ああ。知ってます……」
虚ろな顔のまま、どこを見ているか分からない瞳をこちらに向けている。
「とにかく、そんなところにいたら危ないからこっちに来た方がいいと思う」
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