幼少期の日記

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あの日記を見つけてから二週間。僕はまた嶋崎先生の所に来ていた。いつもの流れを終えてから、めずらしく僕から雑談ムードに突入させた。 「そういえば、日記が見つかったんですよね。記憶がないのでちょうど小2くらいの時かな」 嶋崎先生はきらんっと目を輝かせた。 「ほんとっ!?」 アニメキャラ見たいな目の輝かせ方だった。 「はい」 僕は嶋崎先生から距離を取る。その倍の距離を先生が詰めてきたので、プラスマイナスはプラスになった。 「なんか「あいりちゃん」って言う女の子が好きだったらしいす」 ませてますよね、と言いながら僕は苦笑いする。きっと先生もあきれてるよな、と思いながら顔を上げると、嶋崎先生は虚空を見つめて固まっていた。 「……嶋崎先生?」 僕が声をかけると、先生はやっと僕の方を見た。目の焦点が合っていない。精神科にかかる人って、大体こんな感じなんだろうか。 「あっ、ごめんなさい。はい、倉延さん今回も異常なしね。お疲れ様でした」 いつものセリフだったけれど、やはりどこか覇気がない。演技の下手な女優が読むセリフのような抑揚の付け方にかすかに違和感を覚えながら、僕は帰途についた。 帰ったらまた、ぼくの書いた日記を読もう。
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