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「だから、お返しするのは無理なのよ。ごめんなさいね、お嬢さん」
「いえ、いいんです」
私の言葉に骨董品店のおじいちゃんもマダムも驚いた。
「私が持っていても、押し入れにしか飾れない。人形の為には、マダムに大切にしていただいた方がいいんです。こうやって最後に会わせていただいて…それだけで充分です」
家に持って帰っても、またお義父さんに売られてしまうかもしれない。
それならば、ここにいる方が安心だ。
「ありがとう…。本当に大切にするわね」
最後に近くで天使の人形を見せてもらい、了解を得て携帯で写真を撮った。
そして写真を携帯の待ち受け画面に設定する。
私の人形は、これで充分だ。
私は骨董品店のおじいちゃんにアパートまで送り届けてもらった。
「もう二度とアイツから商品を買う事はないよ」とおじいちゃんは苦笑いをしていた。
家に帰るとお義父さんが私に向かって土下座をしてきた。
どうやら拓哉に本気で怒られたようだ。
お義父さんは今後、サボり気味だった仕事には真面目に通い、少しずつ借りた(?)お金を返済していくことを約束してくれた。
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