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うっとりするほど艶やかな、陶器で出来た天使の置物。
金髪で、真っ白なワンピースを着た天使。
天使の羽まで陶器で出来ていて、丁寧に扱わないと折れそうだ。
その優しい微笑みは、母の表情にも似ていた。
母のお祖母ちゃんが20歳になった時、アンティークの買い付けをしていた伯父さんに頂いたものだとか。
大祖母ちゃんはそれを大切にし、自分の娘、つまり私のお祖母ちゃんが20歳になった時に譲ったらしい。
またお祖母ちゃんは自分の娘である私の母が20歳になった時に「大切にしてね」と贈った。
私が19歳の時に父と母は交通事故で死んでしまったので、直接譲ってもらったわけでは無いが、当然これを形見とし、大切にしてきた。
拓哉と結婚してこのボロアパートに移り住んだ時、拓哉が「高そう。物騒だから隠しておいて」と提案してきた。
確かにこのボロアパートではいつ泥棒が入ってもおかしくない程度のセキュリティ。まぁ泥棒ももっとお金がありそうな家に侵入するのでは、と思ったけど、この狭い部屋にワレモノを飾るのは…と思ったので、押し入れの中に飾ることにした。
時々眺めては、元気をもらう。
それが、無い。
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