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「お義父さん…まさか…」
私は恐る恐るお義父さんの方を振り向くと、お義父さんはゆっくり立ち上がって玄関があるキッチンの方へ向かおうとしていた。
「父さん、どこに行くんだよ」
なんとなく異変を察知した拓哉がお父さんの行く手を遮る。
「あー…ちょっと、用事を思い出してな」
「お義父さん。私の天使の人形、どこにやったんですか!?」
「え!?無いの!?」拓哉は驚き、私の泣きそうな表情を見て事実だと悟る。
「父さん…そういえば一昨日ウチに来た時、僕がトイレに行っている間に帰っていったよね」拓哉が青ざめながらお父さんを問いただす。
……一昨日も来ていたの?
「あー…あれな。なんか良い物らしくて、結構な値段で売れたぞ」
お義父さんは悪びれもなくへらっと笑う。
値段なんてどうでもいい。
あれは絶対に手放すつもりが無かったものだ。
少なくとも、譲る相手のいない私の代では。
「父さん、どこに売ったの。お金はどうしたの」
拓哉が逃げようとするお義父さんをしっかり捉まえて離さない。
「あ、あぁ。俺ん近くの金井さんだ。…金井骨董品店。金は、もう無い」
「無い!?」
「ちょっと借りてた金があってな、それの残りだ。そのケーキは」
私はすぐに携帯と財布を握りしめ、家を飛び出した。
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