私のそばにいるよりは

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「実はあれ、私の人形なんです!勝手に持ち出されたものなんです!」 「……あんた、拓哉の嫁さんか」 「…はい。垣根結菜です」  おじいさんは「はー…」と深いため息をついた。 「それだけはしてくれるなと常々言っとったんだがなぁ」  おじいさんは小さな腰掛にどっこいしょ、と腰を下ろす。 「嫁が俺にくれたんだ、と嬉しそうに言っとったで、思わず信じてしまったんだわ」そう言って売買契約書のようなものを見せられた。  買取額、10万円。  たった10万円であの天使の人形が骨董品店に売られてしまったかと思うと、眩暈がした。いや、今の私では10万円なんて大金だ。 「私…買い取ります!まとめてはお支払いできませんが…」 「いや、あれはもう手元にないんだよ」  おじいさんは再び深いため息をついた。 「昨日のうちに売れてしまったよ。40万でな」
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